2014年6月21日土曜日

スタンフォードで話題になるベンチャー企業(訂正版)


「スタンフォードビジネススクールの卒業生で一番優秀な学生は、起業する。その次に優秀な学生は、スタートアップに入る。」(スタンフォードビジネススクールの教授のグロースベック

1.優秀な卒業生は起業するのか?

このブログで、起業については、自分の経験を含めて随分紹介してきた。
日本では、起業というと、期待値(自分の儲け)が低い印象がある。
しかし、アメリカで起業すると、投資家からお金を集めた後は、従業員の誰よりも給料がもらえ、誰よりも株をもっていることになる。実は、期待値を計算すると、非常に割りが良い。投資家から数十億円くらい資金を集められれば、給料は、2500万円から3500万円くらい、株は、社長の地位を維持できれば、10%持っている存在となるのが通常である。会社が成功すれば一生遊んで暮らせるだろう。

銀行からの個人保証でリスクを負わなければならなくなる日本の中小企業の経営者よりも、ずっとリスク・リターンが良いのである。

失敗しても、優秀なら、別の会社に入れる。失敗しなくても、他のことに興味を持ったら、自分の会社の株を大量にもったまま別の人の会社に入ることも可能である。ブラックショールズの公式で、オプションの価値を計算するとき、ボラティリティ(リスク)を高く代入すると、オプションの価値が跳ね上がるが、「失敗しても別の会社に入れる」というオプションがある場合、リスクを極限にとることが、ブラックショールズの式上も、もっとも儲かるという結論に達するのである。

スタンフォードビジネススクールで、Grousbeckが、「一番優秀な卒業生は起業する」と言ったのには、理由があるのである。


 2.ほかの人の創業したスタートアップに入るのは、割りが良いのか?

起業をする良いアイディアが思い浮かばなかった場合、卒業後に、他の人の創業したスタートアップに入るのは、割りが良いのだろうか。

ビジネススクールを卒業して他の人のスタートアップに入った場合、投資がある程度入っている会社なら、年収は、1000万円から2000万円の間くらい、株は、0.1%以下くらいが相場だろう。投資を受ける前の会社であれば、投資を受けるまでは、給料はなしで、そのかわり、1%から7%くらいの株が貰えるだろう。

これは割りが良いのか。

例を見てみよう。

最近日本にも上陸したUber。アプリで、高級車を呼べるサービスだが、最近、1200億円を1.7兆円の時価総額で集めることに成功した。

時価総額は、企業の値段。日本で1.7兆円の値段のついている会社というと、例えば住友商事。
 


実は、Uberの創業は、2009年。
たった、5年間で、住友商事と同じだけの価値のある会社を作り出したということになる。



私がスタンフォードビジネススクールを卒業したのは、2010年6月。もし、この当時、Uberに入っていたとすると、創業者の資金のみが入っていた状態での入社となる。投資家が入る前ということだ。

ところで、この段階のUberを探すのは、難しかったのか。

私が卒業するころ、いろいろなパーティに呼ばれた。お酒を飲むので、自分では運転できず、タクシーを呼ぼうという話になり、その頃、盛んにUberが使われていた。「これはいいサービスだ」と得意げに友達が見せてくれたのを覚えている。外では、まだ話題になっていなくても、なぜかスタンフォードビジネススクールでは大きな話題になっているということは良くある。

実際に卒業と同時にUberに入ったスタンフォードビジネススクールのクラスメートもいる。

その友人が、いくら株式をもらったかは分からない。

ただし、スタンフォードビジネススクールを卒業していれば、Series Aの後の会社でも、0.1%から0.3%くらいは貰えるのが普通である。

そこで、仮に保守的に0.3%もらったとする。実際には、もっともっと貰っているだろう。つまり、上の表から、2000万円の0.3%である6万円に相当する株式を貰ったということになる。

5年後の現在、Uberの時価総額は、1.7兆円なので、2000万円から1.7兆円に時価総額が増えたということは、85,000倍になったということである。

ところで、時価総額が85,000倍になる過程で、Uberは投資を受けており、この投資を利用して、時価総額があがっている。その投資による株式の希薄化の影響について、検討すると、おそらく当初の株主は、3分の1程度に株式が希薄化している。


(公開情報をもとに作成。Anti Dilutionなどの特殊な条項がなく、従業員のストックオプション総数を保守的に20%と過程。従業員のストックオプションは、普通15%から20%程度。)

そうすると、彼女がもらった6万円の価値は、時価総額が85000倍となり、他方で希薄化で3分の1の持分となった(0.3%から0.1%に持分が減った)ため、現在は、6万円x85000/ 3 で、17億円程度の価値があることになる。

実際には、パフォーマンスをあげれば、毎年追加で株式を貰えるので、 彼女の株は、入社時よりももっと多いはず。

もう大金持ちだ。

彼女ほど優秀でなくとも、Series AでUberに入ることが出来ていれば、当時の時価総額は60億円だったから、 入社時にもらった株が、今は、100倍近い価値になっていることになる。入社時に数100万円分の株くらいは、くれるのが普通なので、やはり数億円以上の資産家になれる。


このように成功する会社は、必ずクラスメートの間でバズになっているので、自分で一から掘り起こす必要はない。2002年にスタンフォードに夏季留学したときには、Googleがクラスメートの間で大きなバズになっていて、コンピュータサイエンスの学生の友達のオランダ人(ガートという名前だった) は、私がヤフーで検索しているのをみて、やめろと言ってきた。

自分で一から掘り起こす必要はない(友達の噂話にのれる)、という意味で、グロースベックのいう二番目に優秀な学生がとる進路なのだろう。


ところで、5年間で、85000倍の時価総額となったUberも、日本進出には苦労しているらしい。
2012年くらいから日本進出の話があり、私のところにも、日本代表の話をもってきてくれる人もいた。
今年、2014年にようやく日本に進出できている。

同じく今年日本に上陸したYelpも、2012年くらいには、日本進出の話があり、こちらも代表の声がかかった。私には縁がなかったが、Yelpは、今年、ようやく日本に進出にしたらしい。

日本のマーケットは、なかなか分からない、ということなのだろうか。

(注:当初の記事については、Cap Tableを作成しないで記載したため、数字が誤っておりました。上記の記事は訂正済みです。)




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