2011年3月7日月曜日

起業家

「えー、農業のビジネス?農家ってリスクとるの?」「それって、Non Profit?」

一年前、今のビジネスのアイディアを知人に話すと、決まって、「気が狂ったか」という反応が返ってきた。

「なんで、インターネットとか分かりやすいのにしないの?」とも聞かれた。

何気ない会話だが、実は、起業家をどう見るのかという問題をはらんでいる。

以前のブログにも紹介したMike Cassadiのように、起業家の中には、2年くらいで会社を売り払うことを目的とする「短いヒット」を狙う人も確かに入る。これをシリコンバレーでは、「カネに雇われた傭兵」と呼ぶらしい。

私にとっては、起業家とは、既存の業界を(良い意味で)破壊する人種だ。シリコンバレーでは、これを目的とした技術を、Disruptive Technologyという。例えば、「クライナーパーキンスは、Disruptive Technologyの可能性のある技術以外には投資しないし、興味もない」と、クライナーのパートナーが言っていた。

業界を破壊するとは、アンディ・グローブのいうストラテジック・インフレクションポイントを引き起こすということである(何それ、という方は、こちらを参照)。要は、業界の競争のルールを根本的に変化させることを意味する。

例えば、インターネット、アマゾン、アップル、ネットフリックスのせいで、出版業界、新聞(紙?)業界、映画業界の競争のルールは根本的に変わってしまった。

最近では、電気自動車が、自動車業界にストラテジック・インフレクションポイントを引き起こせるかどうかが注目されている。これは、中国で、トヨタの100分の1にはるかに満たない規模のベンの会社(以前のブログを参照)が、垂直統合型の業界を、水平統合型に変え、競争の仕組みを変えられるかどうか、ということだ。

起業家として、ストラテジック・インフレクションポイントを引き起こすには、「常識」に挑戦する必要がある。

例えば、眠れるアメリカの会計業界。「会計士業界なんて、Disruptできるの?」と思われるかもしれないが、アメリカでは、Intuitが出てきて、業界の仕組みが変化した。

同じく眠れる弁護士業界。やはり、弁護士業界をDisruptするのは難しそうなイメージだ。しかし、アメリカでは、Clearwellという会社がセコイアから投資を受けて、インフレクションを起こそうとしている。

Sales Force.comは、「顧客情報という最重要情報の管理は他社に委託しない」という常識を打ち破って、大成功した。

伝説のベンチャーキャピタリストのアンディ・ラクレフは、「起業家として成功するには、条件がある。一つは、正しいアイディアに集中すること。もう一つは、これが良く間違われているのだが、他の人が正しいと思わないことに集中すること。」と話していた。いくら良いアイディアでも、皆がやっていてはダメなのだ。

例えば、良く聞く議論に、「絶対に、自動車業界には、電気自動車が登場して、Strategic Infletion Pointが起きる。Strategic Inflection Pointでは、起業家にチャンスが到来する。だから、私は、電気自動車(あるいは電池)のビジネスをする。」というものがある。見事な3段論法なのだが、これは、既に皆がそう思っているので、ちょっと遅いと思う。

水と農業のビジネスは、市場が大きく、誰もまだDisruptしていない。ベンチャーキャピタルの投資も、クライナーとコスラを除いて、殆どない。無数のベンチャーキャピタルの投資が集中しているクリーンエネルギー業界とは対照的だ。

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