2009年6月2日火曜日

今そこにある危機

MBAに留学すると興味が変わるのか」と良く聞かれます。私のケースを記載したいと思います。

MBAに留学する前、私は、バイオテクノロジーに興味がありました。例えば、癌を治す新薬が出来たら素晴らしいなどと考えておりました。仕事でも、バイオ・ヘルスケア系の案件を積極的に受任するように心がけていました。

留学後、教授・友人からの刺激を受け、今はクリーンテクノロジーに興味があります。MBAとともに、環境科学(ソーラーパネルなどのクリーンエナジー、水、バッテリーなどに関する科学)の分野のMSもJoint Degreeとして取得することになりました(下記URLですので、出願者の方は、興味があればご参考になさってください)。
http://iper.stanford.edu/home

1.気候変動を予測するという授業

私がクリーンテクノロジーに興味をもったきっかけは、モンテカルロシミュレーションを用いて、気候変動を予測する授業を履修したことにありました。この授業では、20人から30人程度の少人数の学生が、ノーベル受賞者(例えばアルゴアとともにノーベル平和賞を受賞したIPCCのクリス・フィールド氏)をはじめ、その分野で世界をリードする多くの科学者から直接指導を受けられます。

科学者の間で用いられている精密なモデルを利用して、温度の上昇を予想したところ、数十年間で、気温が約10度上昇することを学びました。大勢の人が死亡し、経済にも大きな打撃が及びます。 また、『仮に』、2020年に、CO2の排出量を0(!)にできたとしても、温度はどんどん上昇していきます。(数字を抽象的に記載しているのは、スタンフォードのHonor Codeとの関係で、これ以上具体的に書けないためです。合格されてスタンフォードMBAに留学される方は、ここの記載は、課題とは前提を変えていますので、参考にしないで下さい。

単純ですが、これは大変なことだと思いました。

2.多くのExpertとの会話

また、シリコンバレー・スタンフォードのExpertsたちから、以下のようなショッキングな話を連日聞いています。

・「10年から20年後にはバングラデッシュはなくなるだろう。海面の上昇でバングラデッシュがあった場所は水没する。北はヒマラヤだし、彼らには東や西にも逃げ場はない。1億5000万の国民の大半が死亡するだろう。」(CIAを含め、ホワイトハウスの上層部もクライアントとしている、著名な環境コンサルタント(シニアパートナー))

・「水は21世紀のオイルというのはシリコンバレーの常識だ。」(トップの一つであるVC(シニアパートナー))

・「水は21世紀のオイルだ。20世紀に石油の争奪が戦争を産んだというのは常識だ。21世紀には、気温の上昇によって、川も干上がって水不足が更に進む。例えば、われわれの分析では、メコン川も、近い将来には、大半干上がってしまう。われわれのシュミレーションでは、近い将来、すべての人類を賄うのに足りる水はない。その解決策は、(水の争奪及び人口の減少という意味で)大規模戦争となるだろう」(著名な環境コンサルタント(シニアパートナー))

いわゆる有名人がこういった議論をするのを目の前で聞くと、嫌でも刺激を受けます。

3.テクノロジー

それでは、テクノロジーのイノベーションは、問題を解決することができるのでしょうか。

多くの大企業が、「No」と考えているようです(ディスラプティブなブレークスルーは困難なので、リアリスティックに、Energy Efficiencyなどを中心としてCO2の排出を下げるべきだとする立場)。 エクソンのCEO、BPのCEO、ChevronのCEOが最近講演にいらっしゃいましたが、どなたも、「代替エネルギーへの移行がここ30年間で飛躍的に進む可能性はないと考えている」とおっしゃっていました。朝日新聞の2009年4月20日報道によれば、トヨタの経営幹部は、純粋な電気自動車について、「走行距離を伸ばすには、ただでさえ高価な電池をたくさん積むしかなく、とても売れる価格にならない」と言及されたそうです。

ただし、もし、違うシナリオとなった場合には、現在の業界のリーダーは、戦略・戦略をサポートする企業カルチャー・競争上の強みなどのすべての変革を迫られるため、業界の再編となる可能性があります。

三菱自動車の益子社長は、「社運をかけて」電気自動車を他者に先駆けて今夏から投入するといわれたそうです(文芸春秋2009年6月号)。また、電気自動車の会社であるテスラは、1000万円程度のロードスターに加え、500万円程度のセダンを発売します。セダンの購入申し込みは1000台に至ったといわれています。

どのシナリオが正しく、それに応じて、どの企業が勝つのか、大変興味深いと感じています。

現在のところ、シリコンバレーでは、トヨタの読みが正しいという噂が多いように感じています。電気自動車への移行となるのは、20年後だろうと言われています(車のモデルの変化には、5年から8年であり、モデル変化3回分の時間が必要と言われています)。そのような理由で、「電気自動車は、現段階ではマーケットがあると誰も信じない。誰も信じなければ、ファイナンスはつかない。ベンチャーのリスクは、オペレーションリスクではなく、次のラウンドでVCファイナンスが入るかだ。電気自動車のベンチャーにとってのチャレンジがここにある」という人もいます。

「それでも誰かが何かをしなければならない。僕は、Political Willの問題だと思う」などと友人達は議論してきます。毎日のクラスメート達との議論にエキサイトしています。

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